全国から訪れる人多し!旧林家に使われた金唐紙とは?
2017年06月02日
先週に続き、旧林家住宅の調査をしてきました。
岡谷駅の近くにある旧林家住宅。製糸家の林 国蔵が明治時代に10年かけて建てた和洋折衷の家は、
国の重要文化財に指定されており、地元の人よりも遠く県外から訪れる人が多いといいます。
先週ご紹介したとおり、使われている部材、材料がすごい。欄間などの彫り物がすごい。
建具やガラスなどいろいろ見どころがあります。
しかし、この家を有名にしているのは「金唐紙」というもの。
いったいそれは何なのか、引き続き調査に行ってきました。
母屋から見ると、中庭を挟んだところにある離れがちょっと変わっています。
二階が白壁の土蔵づくりになっているのです。
その中に金唐紙があるというので、離れに向かいました。
一階の部屋は金唐紙の説明コーナーになっています。
そもそも金唐紙とは何のかを、岡谷市観光サポーターできこの住宅の案内人、
小松 登美秋さんに聞きました。
『ヨーロッパで動物の皮を材料に作られていた金唐革がもとになっている。この金唐革を輸入した日本政府が、日本でも作れないかと奨励し、和紙を使って作る金唐紙が生まれた。』
金唐紙がどのように作られるのか、わかりやすく説明されていました。
まず、和紙を何枚も重ねて原紙を作る。それに錫や金・銀の箔をはる。
それを版木にまきブラシで打ち出す。それに漆や油絵で着色をする。
◇金唐紙の製作過程の説明

和紙を使うことで大きなものが作りやすくなり、高級壁紙としてヨーロッパに輸出された。
バッキンガム宮殿も飾ったそうです。
輸出工芸品をして人気を集めた金唐紙も、やがて機械で作る壁紙が登場し、次第に廃れていき昭和の中期になると、その技術は完全に途絶えます。
やがて、独自に金唐紙の技術を研究する人々が現れ、消えたはずの金唐紙が再び作られるようになりました。
◇復元された金唐紙

離れの一階で 金唐紙についての説明を受け、
いよいよ金唐紙のあるお座敷に案内していただきました。
かなり急な階段を上がると、太陽光を遮断した 座敷が目の前に現れます。
金唐紙は洋館に使われていることが多く、旧林家のように座敷に使わることは稀だそうです。
◇金唐紙が使われている離れ二階の座敷

日本の各地に金唐紙を使った建物はいくつかあります。
有名なところでは、上野にある旧岩崎家住宅(三菱財閥を起こした岩崎家の家。)
ただし使われているのは復元された金唐紙の場合が多い。
旧林家住宅のように、明治時代のものがそのまま残っているのはたいへん貴重とのことです。
以前は唯一…何年か前に九州の炭鉱王が建てた家で見つかったそうです。
旧林家の金唐紙…金色の部分は長い年月を経て黒ずんでいますが、
当時の輝きにイメージを膨らませてみると本当にすごいと思います。
信州の山の中に来た外国の生糸のバイヤーが、
この金唐紙に囲まれた和洋折衷の座敷に通されてどれほど驚いたか…
想像するだけでも面白いと思いませんか?
ぜひ一人でも多くの方に訪れて欲しいと切に願います。
◇和洋折衷 → 窓はこんな感じです

◇建具も凝っています

場所ですが、岡谷駅から徒歩5分。駅前に案内板があります。
駐車場完備。
普通に見ても小一時間はかかる。ちょっと質問をしていると、1時間半から2時間になる。
入館料は、大人:570円、水曜日はお休み。
問合せ番号:0266-22-2330
調査隊員:土橋桂子