近代登山の父 ウォルター・ウェストンの愛が、100年の時を経てよみがえった?

まずは、ウォルター・ウェストンってだれ?! というお話から。

ウォルター・ウェストンは、イギリス人宣教師です。

教会団体からの派遣で、初めて日本に来たのが、今から128年前、明治21年(1888年)。

以来3回日本を訪れ、何度となく北アルプスに登っています。

当時、登山という文化がなかった日本人に、山に登ることの魅力を伝え、

近代登山の父と呼ばれているんです。

上高地に、レリーフがありますよね。

 

そのウォルター・ウェストンの愛がよみがえった、ってどういうことでしょう?

 

実はウェストン、こういうものを残しているんです。

 

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左側の赤い皮の本。

これは日記帳です。

大正4年(1914年)の夏、

生涯で最後となった北アルプス登山のために宿泊した温泉宿「上高地 温泉場」に、

この日記帳を残したんです。

表紙刻まれた文字は

「KAMIKOCHI ONSENBA CLIMBER'S BOOK」(上高地温泉場クライマーズブック)

この素晴らしい北アルプスには今後、多くの外国人登山者が訪れるだろう。

彼らの登山の参考になるように、

自分が体験したルートや時間、天候などを記録として残し、

さらに宿泊した人に自分たちの体験を記してもらうようにしよう。

そんな想いで残していった日記帳。

後にここを訪れた外国人登山者が、次々に書き継いでいき、

1972年までの間、80人余りの人々の記録が記入されていきました。

 

これをどうしたか。

松本市山岳観光課 課長 加藤 市朗さんにうかがいまいた。

 

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「この中には大変貴重な記録が残されています。

しかも、外国人の視線で書かれている。

北アルプスに寄せるウェストンの想い、

さらには山を愛する外国人登山者の気持ちが詰まっているんです。

これはやはり、後世に引き継いでいくべきものではないか、ということで、

松本市が主体となって、日本山岳会などからも協力を得てこの日記を翻訳し、

記念すべき第1回目の山の日、8月11日に出版しました。」

 

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貴重な資料となる記録がたくさん書かれています。

例えば、アメリカ人のメルル・デイヴィスという人が書いた焼岳噴火の記録。

 

『・・・噴煙は一部が朝霧でかき消されたものの、その大半は空高く立ち上り、

巨大な傘のように広がると、南西の風に乗り、すばやく谷をのぼっていった。

その結果、朝の日差しは夜の帳(とばり)に変わり、淡いスレート色の灰が

これでもかと降り注いだ。・・・』

 

これ、ほんの一部ですが、読み進めていくとその様子が鮮やかに浮かんできます。

どの方の記録も、文章が素晴らしく、読み応えがあります。

山の様子だけでなく、一緒に行った日本人とのやりとりを、

愛情たっぷりに描いています。

中には、自分の目の前に広がる景色、山の素晴らしさを、

詩で表現している人もいます。

この中に、ウェストンと80人の外国人の、

山への想いがぎっしりと詰め込まれている。愛を感じるんです。

 

「確かにそうだと思います。

そして彼らが愛した美しい山々は、今もここにある。

彼らの想いとともに、後世に引き継いでいきたい大切なものだと思います。

山が好きな人はもちろんですが、そうでない人も、

ぜひ読んでいただきたいです。」

 

松本市博物館では9月4日まで、企画展が開催されています。

この本物の日記帳のほか、大正時代に画かれた登山ルートを記した地図や、

河童橋の上で撮影したウェストンの写真など、貴重な資料が展示されています。

 

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そして、8月11日に出版されたこの本

「ウェストンが残した クライマーズ・ブック

外国人たちの日本アルプス登山手記」

は、長野県内の書店で販売されています。

 

まさに、ウェストンの愛が、100年の時を経て、

この本の中に、美しくよみがえっています。

いろ~んな発見と感動が詰まった、愛の本なんですね。

 

松本の調査隊員 塚原 正子でした。

 

 

 

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元民放テレビ局のアナウンサー。3人の子どもを育てながら、おもしろいネタがないかとアンテナを張りめぐらしている。への字まゆげがチャームポイント。飯田市出身。

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